Intern

はじめに

こんにちは
髙松美香です。
9月に入りまだまだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は2日から舞鶴海上保安部にインターンに行っていました。西舞鶴駅から徒歩30分ほどのところにある総合庁舎の3階にあり、建物の裏手には海が広がっております。 インターンは2~6日の5日間行われ、

1日目 海上保安庁、第八管区の説明、海上保安学校の見学
2日目 交通課の説明、灯台点検の見学
3日目 警備救難課の説明、救難士機材体験、巡視艇見学
4日目 ワーク課題の説明、自主研修
5日目 自主研修

このようなスケジュールでした。
ここでは軽く舞鶴海上保安部について説明した後、インターンで興味深かったことについてつらつらと書いていこうと思います。
なお、書きたいことが山ほどあるので文字ばかりになってしまっています。あしからず。。


舞鶴海上保安部と第八管区

舞鶴海上保安部は東は福井県、西は島根県までの第八管区を警備する保安部の一つです。

管区配置図拡大(詳細)

管理課、交通課、警備救難課があり、危険物の密輸、貝等の密漁などを取り締まっています。 それぞれの課の仕事は以下の通りです。

課名 業務内容
管理課 備品の管理や補填、庁舎の管理、人材確保など
交通課 灯台の保守管理や安全啓発、岸壁のパトロールなど
警備救難課 犯罪調査や領海警備、海洋汚染の防止など

<1日目>

ここからは1日目のお話で興味深かったことを書いていく。

油の防除

タンク船や大型船が座礁したり、衝突したりすると船から油が漏れだし、他船の入出港に影響するだけでなく、環境汚染にもつながります。 漏れた油は海の上を漂い、風や潮の流れで浜に流れ着き景観を汚したり、時間をかけて海底に溜まることで貝や海藻の生育や養殖業にも影響する。 これを取り除くためには桶やバケツなどで油を大体取り除いた後、油回収ネットや吸着マットを使って取り除くようです。

海上保安部の戦艦

海上保安庁は巡視船、巡視艇などの船だけではなくヘリや航空機なども保有している。
巡視船は大きな船、巡視艇は小さい船のことを言い、沖合で活動する際は巡視船、湾内で活動する際は巡視艇で行う。
巡視船と巡視艇には言わずもがな様々な種類があり
巡視船:PL型、PS型、PLH型 etc...(PLとはPatrolパトロールLargeラージ、PSはPatrolパトロールSmallスモール PLHはPatrolパトロールLargeラージHelicopterヘリ)
巡視艇:PC型、CL型がある。(PCとはPatrolパトロールCraftクラフト、CLはCraftクラフトLargeラージ) ちなみにこの船はCL型巡視艇「ゆらかぜ」です


航空機にもさまざまな種類があるらしいが、私が一番気になったのは「シーガーディアン」と呼ばれる無人航空機で救助の際に先にこの航空機を飛ばし、浮き輪などを海難者に届けたり、捜索の際にも使用される。
日本全体で3機あり美穂にある航空基地に1機常駐しているようだ。

海上保安学校

中舞鶴には海上保安学校があり、日本でも有数の海上保安官を育てる学校である。在校生徒558人でそのうち女性は101人在籍している(2024年9月時点)。
海上保安学校のコースは以下の表のようになっている。消防や警察と違い、海上保安官候補生は入学時からそれぞれのコースで専門的な知識を学ぶ。海上保安庁は海の警察、消防、救急等さまざまな業務があるため、コースも必然的に多くなってしまうらしい。

課程名 コース 教育内容
一般課程 航海コース 航海士を育てるコース 操船技術や航海計器の取り扱いを学ぶ
機関コース 機関士を育てるコース エンジン、燃料、電気機器などに関する基礎を学ぶ
通信コース 巡視船及び航空機の通信士として必要な知識・技能を学ぶ
主計コース 船内で経理や調理を担当する主計士を育てるコース
航空整備コース 航空機の整備とともに自ら航空機に乗り、海上保安業務を行う航空整備士を養成する
管制課程 海の安全運航に必要な状況を船外から提供し交通整理を行う海の管制官を育てる課程
航空課程 空から海を守るパイロットを育てる課程
海洋科学課程 海の安全を確保するために必要な海洋データを収集・解析するための基礎を学ぶ

海上保安学校、授業体験

管制課程の模擬管制授業を体験させてもらった。
管制課程を修了した生徒はそのほとんどが「海上交通センター」という飛行場でいうところの管制塔で勤務する。
この海上交通センターは東京湾や瀬戸内海など狭く、船が多く運航する場所にあり、海図や数分後の船の位置を反映したレーダーを見ながら船同士の接触や水深が浅い海域で船が座礁しないよう無線を用いて船のアシストを行っている。
湾内と言っても広いので船同士がぶつかることはあれど、座礁することはないのではと思っていたが、海図を見ると案外浅い場所が多く、地上から見える港の広さと実際に船を動かす時の港の広さは違うのだと思った。 船が座礁する海底の深さは船を浮かべた際に沈んだ部分でわかる。沈んだ部分の15~20%、海底から浮いていないと船を動かすことができない。

第十雄洋丸事故

海上交通センターが設置される転機となった事故だ。
昭和49年、東京湾で大型タンカーの第十雄洋丸と貨物船パシフィック・アレスが衝突し、火災が起きる。消防船を投入しても火災を鎮火することができず、東京湾の外まで引っ張り、太平洋上で撃沈処分することとなった。 死傷者40人を出し、当時は高度経済成長期で東京湾に入ってくる船も増えていたため起こった事故であった。


<2日目>

この日は交通課の仕事を見学させてもらった。
安全啓発、灯台の保守管理等がある。

<AIS(船舶自動識別装置)>

湾内で自分の船の位置や大きさ、積み荷、速力、進む方向などを他の船に発信する装置。
500t以上の船は搭載が義務図けられている。

<バーチャルAIS>

立ち入り禁止区域などを手早く多くの船に知らせるため実体のないマーカーをAIS上に引く(総務省の許可がないと使えない)
5年前の台風の際に波が安定する空港の近くに湾内の船が集まった。その船が風や波にあおられ、連絡橋に衝突し壊れてしまう事故があった。この事故を機にこのシステムが導入される。

<灯台の保守管理>

交通課は灯台の保守管理を行っている。
下の写真は東舞鶴にあるミヨ埼灯台です。灯台の中に梯子があり、それを掛けて四肢のうち3点をつけながら昇降し、ゆっくり上っていきましたが、背中から落ちそうで怖かったです。 頂上は成人男性3人が入れるかどうかの広さで一応の柵がありましたが、膝上くらいしかなくしゃがんだ状態での移動が推奨されているようです。 「頂上の広さ」という写真を見ていただくと、私の膝とその前に頂上のふちが見えます。背中を灯器につけた状態でこの写真を撮ったのでどれぐらい狭いかわかると思います。 頂上には柵と太陽光パネル、灯器があり、日中だったため灯器は点いていませんでしたが、灯器の側面に昼夜を測定するセンサーがあり、ここを塞ぐと灯器が点くので点灯するかどうかをチェックします。

舞鶴海上保安庁では100機もの灯台を管理しており、1年に1回、それらの点検を行っています。
このミヨ埼灯台は東舞鶴の方にあり、海上保安部から30分ほど車を走らせた場所にあります。遠くにある灯台だと車で1時間走らせた後、約90分山の中を進んで点検しに行くものもあるそうです。

ミヨ埼灯台
ミヨ埼灯台外観
灯台の頂上からの景色
灯台の頂上からの景色
灯器
灯器
頂上の狭さ
頂上の広さ
灯台の中
灯台の中の様子

<灯台の光>

交通課の方に教えてもらった中で2つ新しい知見がありました。
1つ目は灯台が点滅する間隔がそれぞれ異なっていることです。
船は夜自身の位置を知ることが難しいため、陸からの光によって把握する必要があります。その際すべての灯台が同じ点滅間隔だと自分がどこにいるかわからなくなってしまうためだそうです。
2つ目は灯台の色の意味です。 灯台の色は赤、緑、白があり、赤と緑が特に興味深かったです。赤と緑は湾内における航路を示すためにあり、右に赤、左に緑を見ながら湾内に進むと座礁や岸壁に衝突せず安全に入れるそうです。

<ブイ>

ブイのお話にも新しい知見がありました。
1つ目はブイの形です
ブイの形には主に灯浮標とうふひょう浮体式灯標ふたいしきとうひょうがあります。灯浮標はブイの一般的な形である三角コーンのような形をしたブイで、 浮体式灯標は塔のような形をしたものです。
この二つのブイは海底の重りとブイをつなぐ鎖の長さが違い、灯浮標は長く、浮体式灯標は短くなっています。 これはブイの設置場所に関係します。水深が深く周囲に障害物がない海域(ブイが座礁、岸壁に衝突する可能性のない海域)には灯浮標、 陸地や岸壁に近くブイが座礁する可能性のある海域に設置する際は浮体式灯標が使用されるそうです。

灯浮標
灯浮標
浮体式
浮体式灯標

2つ目はブイと船の衝突事故です
広い湾内でも不慮の事故で船とブイが接触してしまうことがあります。東京湾や大阪湾など船舶量が多い港ほどこういった事故が多発します。 接触した船はそのブイを管理する海上保安部に連絡する必要がありますが、時々接触しても連絡を入れない当て逃げの船があるそうです。 ブイは1つ100~600万円で売買され、修理代も接触した船に請求しなければならないため接触した船を見分けるためにマーカーを使用するそうです。 マーカーは蛍光灯のような形で中に蛍光色の液体を入れてブイに設置し、船が接触するとマーカーが折れて中の液体がかかりそれを一つの証拠にして賠償金を請求します。 しかし、このマーカーを設置するための設備にも導入コストがかかるため、よく船と接触するブイ(航路を示すブイ等)だけに設置されています。 6年に1回交換され、交換されたブイは保管所に持っていき、そこで点検、補填、整備し使いまわす。


参考文献リスト

第七管区海上保安部HP
ブイの画像リンク
ブイの種類