草刈り機の自動化、ロボ化関連論文紹介
安永泰成
2024/11/21
初めに
草刈りは農業にとって、重要な役割を持つ。害虫対策や作物の成長にも影響する。
農業全体の省力化が求められる昨今。私は現在、草刈りを省力化できないかという研究に携わっている。
そのため、今回は草刈り機の自動化、ロボ化に関係する論文を紹介していこうと思う。
低コスト1周波RTK-GNSSと低コストIMUを用いたロボット草刈機の自律走行制御システムの開発
農地の畦畔を対象とした、自律走行する草刈りロボットを低コストで実現するための研究。
従来の機械に使用されているRTK-GNSS受信機やIMUの値段を下げて、自律走行する草刈りロボットの開発を行っている。
重要なのは、従来より安価な自律走行制御の有効性が確認できたところである。
草刈り機以外の農業機械にも、低コストでの自律走行機能を付加できる可能性があることがわかる(海津[1])。
画像認識を用いた草刈機の距離センサシステムの開発
自律走行する草刈り機走行中に起こる可能性のある衝突事故を防ぐために開発されるシステム。
ステレオカメラによる距離検出に、CNN(畳み込みニュートラルネットワーク)による物体認識を組み合わせた、距離センサシステムの開発の論文である。
研究の結果、5m程度までは確実に人の検知が可能であった。
重要なのは、草丈の高い状況でも距離検出がちゃんと機能するところである。
姿勢の違いによって推定距離の変動が大きくなる問題はあるが、システム自体は草丈が高くても低くても機能するため、いろんな土地で活用できる汎用的な距離センサシステムであると考えられる(井上[2])。
速度制御を用いた草刈ロボットの開発
商品化済みや開発済みの草刈りロボットは重い場合や人が押す必要があったりするため、それらを解決する持ち運びが可能な草刈ロボットの開発とその速度制御法の提案がされている。
重要なのは、草刈りが容易ではない場所で草刈刃の回転数が落ちる場合に、速度制御で移動速度が低下するところと、平地から傾斜地への移動でも安定した速度制御が可能なところである。
速度制御によって、草が良く生えている場所でも十分なだけの草刈りを行わせることが可能であり、傾斜地への移動でも安定していることから多くの場所での活用が見込めるためである(高桑[3])。
参考文献
[1]海津裕,堤俊雄,五十嵐翔,芋生憲司、2018年9月、画像認識を用いた草刈機の距離センサシステムの開発、農業食料工学会、80巻5号、p.271-279
[2]井上航輔,海津裕,芋生憲司、2020年3月、低コスト1周波RTK-GNSSと低コストIMUを用いたロボット草刈機の自律走行制御システムの開発、農業食料工学会、82巻2号、p.162-168
[3]高桑 雅裕, 今川 裕貴, 杉山 博彦, 高木 敦, 土井 賢太, 矢澤 隆浩, 内田 敬久、2014年、日本機械学会東海支部第 63期総会講演会講演論文集、63巻、p.18-19