2022.9.10 山本吉伸

空気ペンのおもひで

はじめに

今を去ること20年以上前に僕が作って発表した「空気ペン(空中に文字がかけるペン)」を、ここで紹介します。作ってしまった技術についてはすぐに興味を失ってしまう僕なのですが、たまたま資料を整理していて新聞記事を見つけたので懐かしく感じた次第。

空気ペンとは

空気ペンとは、街角や廊下など,任意の空間に自由に手書きで文字や絵を書き込むことのできるデバイスです。もちろん本当に空中に書き込むわけではなく、ペンデバイスの軌跡情報を記録しておき、HMD(Head Mounted Display)を通して見せるわけです。1999年ごろは、まだHMDが市販されはじめたころでしたし、空間の位置や向きを検知する技術はほとんど出回っていませんでした。もちろんスマホも登場していませんでした。かろうじて携帯電話は売られていましたが、多くのひとはまだ固定電話を使っていた時代です。空気ペンのアイデアを実現するための要素技術はまだまだ未熟で高価なものでした。

技術の中身は空気ペンプロジェクト[1]にありますが、どちらかといえば空気ペンとはなにか[2]に置いてある動画等をご覧ください。

いまとなっては当たり前になった加速度センサや磁気センサ(方位センサ)も、当時はまだ使いやすいものではありませんでした。たとえば、頭を素早く回転させるとどちらを向いているか正確に計測できたのですが、ゆっくり回転させると正確性が下がるという現象があってかなり悩みました。現在では自動補正されたデータがセンサから出力されるようになってとっても使いやすくなりました。いまとなっては懐かしいおもひで・・

マスコミ報道

この研究は実用性が充分に出せなかったので個人的にはあまりうまくいかなかったなーという感想なのですが、世の中的には非常に注目されました。というのも、ドラえもんの秘密道具に「空気クレヨン」というのがあるらしく、ドラえもんの秘密道具ではじめて実現したものができた、ということで紹介してくれる機会が増えたようです。ネーミングってとても大切ですね。

いろんな新聞で取り上げていただいたのですが、個人的には朝日小学生新聞の一面を飾ったというのが自慢です。国立研究所の研究成果が新聞に紹介されるのはよくあることですが、朝日小学生新聞の一面に掲載されるのは非常に稀なことです(右図)。

テレビからの取材もたくさんあったのですが、ちょうど私がスタンフォード大学に行くタイミングだったので、私がテレビに登場したのは2つだけでした。当時の取材で一番僕が登場しているのは「USOジャパン」です。[2]のページで動画を見ることができます。

NTV ズームイン朝!の取材の日が、ちょうど渡米の日でした。成田に向かう準備をして、玉川大学にいきました。もっとも荷物は成田に送ったようなきがします。この日の動画も[2]で見ることができます。

おわりに

空気ペンのような「20年後には常識になるような技術」のアイデアはまだまだいっぱい引き出しに仕舞っています。時間をなんとか作って誰よりも先に実現して見せたいと思っています。一方最近では、3年後ぐらいに商用にできるような技術を中心にプロジェクトを進めようと思っています。その一つが「リモート屋台」。次の記事ではリモート屋台を紹介したいと思います。

参考