避けられない未来:人口減少
だれも未来のことはわかりませんが、一つだけわかっている未来があります。それは少子高齢化による人口減少です。現在1億2千万人いる日本人は、2100年には約3分の1、4千万人台になると予測されています。将来、人口が増加に転じることを期待させる数字は一つもありません。一般論ですが、サービスというのは人がたくさんいるところでは豊かになります。例えば、都心部には5分に1回バスが来る路線があります。人がたくさんいるからですね。すでに多くの地方地域では人口減少が現実の問題となっています。「人が少ない地域でどのようにサービスを維持・発展させるか」が私の研究テーマです。
復古仮説
日本人が4,000万人台にまで減少したら、もう日本は滅亡するんじゃないかというぐらいに感じる人もいるかもしれませんが、実は江戸時代が3000万人ぐらいだったのではないかと推測されています。そこで私は、江戸時代にリーズナブルとされていた社会習慣やサービスが現代のIT・IoT技術で焼き直されて復活する、という「復古仮説」を唱えています。例えば長屋(シェアハウス)、三日勤め(副業を前提とした勤務体系)、屋台・・・人口が少ない中で豊かに暮らす昔の知恵には学ぶところが多いのです。復古仮説の詳細へ(執筆中)
ただし、江戸時代と同じことをするのではありません。コンセプトは学んでも、現代のテクノロジによって全く新しい形になるはずです。例えば、江戸時代は店主が一台の屋台で商売をしていました。でも店主がいつもいなければならないのでは生産性は低いままです。店員さんを雇用したとしても、お客さんがいつ来るかわからない屋台に人材を配置することは合理的とはいえません。ですから21世紀の屋台では、店員さんがいなくても買い物ができなければなりません。そこで必須となる技術が電子マネーです。
地域から流出する資金
電子マネーというと「〇〇pay」といったサービスを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし私たちは独自の電子マネーサービスを開発しています。もし、この地域では消費税を3%増やします、となったらみなさんはどう思いますか?「〇〇pay」では3%程度の手数料が首都圏にある運営企業に流れ、それが国外にお住まいの株主に渡っていくことになります。毎年3%ずつ地域からお金が流出したらどうなっていくか、簡単に想像できます。取引手数料を無料にした独自の電子マネーサービスが必須なのです。大手スーパーや役所などは顧客の利便性を向上させるという立場から、手数料支払いに問題があるとは思っていませんし、当然の負担だと思っています。たとえばコンビニの出納代行サービスだと一件あたり56円かかります。この費用をすべて消費者に還付して、次回の買い物などに使ってもらえれば、市は追加財源なしに(これまでなら市外に流出していた資金で)地域振興券を常に発行しているのと同じ経済効果が期待できます。単に地域から出ていかないというだけで経済規模を小さくするのではく、地域に還流させるような企画ができるのは、独自運営だけです。独自電子マネー詳細へ(執筆中)
現在のコンビニは滅びゆく
サービスの在り方も変わっていく必要があります。たとえばコンビニを維持するためにはその地域に一定規模の見込み顧客がいなければなりません。ですから今後はほとんどの地域でコンビニを維持することができなくなっていきます。その点、私たちの構想する21世紀の屋台は、地元の本屋さんや薬屋さん、雑貨屋さんが商品を陳列します。商品が売れると店主のスマホに通知が届き、店主が(自分の「ビジネス」として)商品を補充します。地域住民にとっては実質的にコンビニのように24時間利用できてなんでも売ってる商店の登場です。屋台は人がいるところに複数持つことができますから、店主からみれば「人が集まりやすい場所に実質的に大きな売り場面積を持っている」のと同じことになります。未来サービス詳細へ(執筆中)
もう一つ補足です。人口減少といっても、明日にも4000万人台になる、というわけではありません。10000万人、8000万人・・と減っていくにしたがって、昭和→大正・明示→江戸に近づく可能性があります。ですから、今後10年間ぐらいを考える場合には、昭和初期~高度成長期に当たり前だった価値観や社会サービスに注目する必要があるでしょう。たとえば「公民館」は現在では単なる役場の出張所とか安価な集会設備として見られているに過ぎないことが多いのですが、地域生活の重要拠点として役割が再評価される日が来るかもしれません。
スマートシティをどう考えるか?
私は人口が減っても経済活動や交流の接点は以前よりずっと増えたと感じる地域社会を目指したいと思っています。これから日本人はどんどん減少します。ほとんどの地域で人口減少は避けられません。だから、私たちはデジタル技術によって人との接点を増やしていく努力をしたい。いままでよりもっと広い範囲の人々と言葉を交わす日常を作り出し、もっと広い範囲の人々に自分たちの農産物や商品に関心をもっていただきたい。そして便利さを追求したネットショップではなく馴染みの店員さんと談笑しながら買い物できる技術を目指したい・・・と考えます。
現状のコミュニケーション技術は「用事があるときにつながる」ものです。でも、普段バス停で一緒になる人とか、馴染みの店員さんとか、用事がなくても会話が始まることのほうがずっと暮らしやすいコミュニティのように思うのです。「いつもすぐそこに誰かはいる」環境を作り出す技術で用事がなくても声を交わす人がいる日常をつくりだし、その結果として活力ある経済活動が実現する。それがスマートシティの一つの在り方ではないでしょうか。行政サービスも、人と人との接点を増やすことを目指したい。単に大量の業務を効率よく処理するという観点ではなく「窓口の人が、集落に住むお年寄りの相談にもじっくりリモートで対応する行政」を作ってほしい。それを実現したいからこそ「自分でできる人ならば、窓口に行かないでも自分でやれる」環境が重要なのだと思います。窓口の親切な担当者という貴重なリソースを、本当に困っている人に割り振るために。
おわりに
地域の方々のご支援を受けることができれば、他の地域に先駆けて北近畿経済圏に「未来のサービス業・小売業」を実現できると期待しています。